基調講演要旨

伊藤圭介と日本の科学のあけぼの
  遠藤正治氏(愛知大学非常勤講師 圭介文書研究会事務局長)
 伊藤圭介の生まれた頃、日本には近代的植物学は存在しなかった。弱冠27歳のとき圭介が名古屋で出版した『泰西本草名疏』は、西洋の植物学をはじめて日本に紹介するもので、リンネの命名法と分類体系が日本に用いられるもととなった。綱・目・類(属)・種・雄蕊・雌蕊・花粉・花糸・変種など、今日、植物学用語として親しまれる訳語の多くはこの書に拠っている。晩年、圭介はわが国最初の理学博士、東京帝国大学の名誉教授となるが、一方で旧式な博物学者という評価も聞かれる。江戸から明治にかけての西洋科学導入期における圭介の役割は、その埋もれた遺稿『植物図説雑纂』(草部)や『錦か植物図説』(木部)を含めて改めて評価されねばならない。


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