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大正時代、汽車の中で乗客たちの本を読む声がやかましい、という新聞投書があったそうだ。ことほどさように我々の先人たちは読書の際に音読をした。江戸時代の前期から中期にかけて数多く刊行された浮世草子は、同時代の風俗描写を主眼に置いた読み物で、いわば日本最初の大衆小説である。ぜひ音読して昔の読書をしのんでいただきたい。 それから、文字の大きい、目に優しい本であったことにも注目していただきたい。これ以後、書物の1頁あたりに収められる文字数は、現代に至るまで右肩上がりで増え続ける。この時代の書物の、少ない文字の容量は、必然的に文学における描写のあり方を規定した。つまりくだくだしい描写はやりたくとも出来なかったことがわかる。 | ||
『西鶴織留』 『世間胸算用』 『傾城禁短気』 『本朝智恵鑑』 |