シェアードプリントプログラムにおける保存
注:このベストプラクティスではGood、Better、Best、Aspirationalの分類を使用しています。
シェアードプリントコレクションが将来的にも利用できるかどうかは、長期にわたる保存にかかっています。冊子体の図書の保存を成功させるには、選別時、保存と利用の全過程、そして図書の物理的な有用性が終わりに近づいた時の積極的な管理が必要です。
シェアードプリントコレクションに選ばれたそれぞれの図書には、固有の性質と歴史があります。ベストプラクティスには、状態のいい冊子体を選ぶこと、劣化やリスクを最小限に抑えるプログラムと物理的環境を作ることに、できるだけ早い段階で多大な投資をすることが含まれます。早期の投資は、後のコストと損失を軽減するのです。しかし、完璧な状態の現物を揃えてシェアードプリントプログラムを開始することは、現実的ではないし、不可能です。
最適な保存環境とその中の資料でさえ、時間の経過とともに劣化する可能性があります。従って、訓練を受けた保存の専門家による継続的な管理は、利用者のニーズを満たし、コレクションに新たなリスクが生じた場合にはそれを軽減するようにダメージを修復するための最も重要な要件の一つです。物質的なものは、理想的な条件下であっても朽ちていきます。ベストプラクティスは、このような損失の可能性を認識し、新しいフォーマットを検証するために古いフォーマットの現物を可能な限り維持しながら、原本を新しいフォーマットに移行する仕組みを組み込んでいます。
以下の概要は、冊子体保存のプロセスを、スタッフ、環境、状態、セキュリティ、リスク軽減の各領域に分けて明確にしたものです。冊子体の図書は、脆弱性があるにもかかわらず、特に様々な場所に分散している場合には、永続的な保存の対象となります。ここに記載されている活動のいずれかが、その存続の可能性を高めることになるでしょう。
各レベルは、それ以前のすべてのレベルを満たしていることを前提とします。
1. スタッフ
- Good プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 保存の訓練を受けたスタッフを確保するか、それが不可能な場合は、すべてのプログラム会員を支援する保存スタッフを有する加盟館を特定すること
- 自館で独自にデジタル化を進めること(すなわち、冊子体と同等のデジタル版があることを特定すること、および/または自館資料をデジタル化すること)
- Better プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 冊子体と同等のデジタル版があることを特定できる公的な電子化プログラムに参加すること、および/または自館資料をデジタル化すること
- Best プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 専属の保存および/または修復スタッフを置くこと
- Aspirational プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 専属の修復管理者と専用の研究室を持つこと
2. 保存環境
(参照:保存環境のベストプラクティス)
- Good プログラムは加盟館に対し、保存環境のベストプラクティスの階層1に対応する行動をとるよう推奨する。加盟館は保存責任のある資料を優先して保存する。
- Better プログラムは加盟館に対し、保存環境のベストプラクティスの階層2に対応する行動をとるよう推奨する。加盟館は保存責任のある資料を優先して保存する。
- Best プログラムは加盟館に対し、保存環境のベストプラクティスの階層3に対応する行動をとるよう推奨する。加盟館は保存責任のある資料を優先して保存する。
- Aspirational プログラムは加盟館に対し、保存環境のベストプラクティスの階層4に対応する行動をとるよう推奨する。加盟館は保存責任のある資料を優先して保存する。さらに加盟館は以下のことに努める:
- TWPI 1 200以上、湿度30~40%、温度10℃以下
- 窓なし
- 紫外線なし
- 使用時に局所的に点灯(時間設定または人感センサー)
- 箱か蓋つきのトレイに入れること
3. 状態
- Good プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 損傷は容認できる程度であること
- 生きている害虫やカビがいないこと
- 本文が著しく損なわれていないこと
- 原本が広範に損傷しているが、リーフマスターとしてフラグが立てられていること。リーフマスターについてはGary Frostの定義(https://cool.culturalheritage.org/byauth/frost/frost1.html または https://web.archive.org/web/20090327104645/http://futureofthebook.com/storiestoc/leaf)を参照のこと 2。
- Better プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 本文に書き込み(ハイライト、アンダーライン、注釈)がないこと
- 紙が少なくとも1回は二つ折りに耐えられること
- 製本が無傷であるか、または適度な費用で再製本が可能であること
- 完璧な状態でない本(唯一の選択肢の場合)は、封筒に入っているか括ってあること
- 書架での確認ができること(現物がある場合)
- Best プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 破れがほとんどないか、全くないこと
- 記事または章レベルで検証できること
- Aspirational プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 印刷当時の状態であること(オリジナルの製本)
- ページレベルで検証できること
- 付加価値:効果的な封筒、脱酸
- 脆いもの:複本またはデジタルの代用品が確認されていること
4. セキュリティ/貸出
(参照:蔵書点検のベストプラクティス)
- Good プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 何らかの方法で現物が追跡できること(無線タグ(RFID/3M)など)
- 所有権表示/ラベリングがされていること
- Better プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 書架での確認に取り組むこと
- Best プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 閉架書庫を持つこと(職員による出納のみ)
- Aspirational プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 検証済みの閉架書庫があること
- 管理されたデジタル貸出(CDL;Controlled Digital Lending 3に取り組むこと
5. リスク軽減
- Good プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 災害対応計画があること
- 火災探知機を設置すること
- 棚を床から1インチ(2.54cm)以上離すこと
- 統合有害生物管理プログラムを実施すること
- Better プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 最新の(5年以内の)災害対応計画があること
- 消火設備があること
- 安全な立地であること(氾濫原、工業地帯、鉄道に隣接していないなど)
- Best プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 災害対応計画があり、災害対応/復旧の訓練を受けたスタッフが常駐していること
- リスクを軽減するよう設計された建物の外壁を有すること(書架の上に水道管を敷設しない、気候に適した屋根の設計、昆虫や小動物の侵入を防ぐ)
- Aspirational プログラムは加盟館に対し、以下を推奨する:
- 定期的(毎年を推奨する)に見直される包括的な災害計画があり、災害対応/復旧の訓練を受けたスタッフが常駐していること
- 災害対応会社と常時契約を結んでいること
6. シェアードプリントプログラムの覚書
(参照:覚書のベストプラクティス)
- Good
- 覚書に、保存に関する考慮事項や加盟館への推奨事項が含まれていること
- Better
- 覚書に、加盟館のための保存要件が含まれていること
- プログラムは、加盟館で発生する可能性のある質問や問題に対して、保存専門家への連絡先を提供すること
- Best
- 覚書に、加盟館のための保存要件が含まれていること
- プログラムは、加盟館に指定の保存専門家を提供すること
情報源
アメリカ議会図書館:
- Preservation Guidelines for Digitizing Library Materials
- Risk Management
- Federal Agencies Digital Guidelines Initiatives
最終更新:2024年1月
脚注
(訳注:)Time Weighted Preservation Index. http://www.conservationphysics.org/twpi/twpi_01.php↩︎
(訳注:)リーフマスターとは、主にコピーを作成するために保管される紙の原本のことです。「リーフマスターとして冊子体の資料を保存し、利用者にはコピーを提供する」という方法を取ることで、冊子体の寿命を延ばす意図もあるようです。↩︎
(訳注:)Controlled Digital Lending. https://current.ndl.go.jp/ca2016↩︎