保存書庫への現物移動
注:このベストプラクティスではGood、Better、Best、Aspirationalの分類を使用しています。
はじめに
図書館は蔵書スペースの不足に直面し、多くの図書館が蔵書の少なくとも一部を保存書庫に頼っています。その保存スペースが、専用に建設された高密度保存書庫施設であろうと、図書館のニーズに合わせて再構成されたスペースであろうと、現物を保存書庫に移動させることは物流の研究です。保存書庫への移動がシェアードプリントプログラムの取り組みと同時に行われる場合、さらに複雑な事業となります。以下のベストプラクティスは、シェアードプリントプログラムの一部として保存対象となっている資料の保管や、保存書庫への移動の際に考慮すべき、シェアードプリントプログラムのためのGood、Better、Best、およびAspirationalのプロセスの概要を示しています。ステップの順序または適用可能性は、現物が移動されようとしている、またはすでに移動されている保存書庫の環境の人員およびタイプによって異なる可能性があります。このベストプラクティスの範疇を超える情報については、本章の最後に参考文献として掲載しています。特に単行本に関しては、冊数から直線フィートへの換算に役立つ図表、人間工学的に書架から本を引き出す方法、引越し業者を利用する場合に提案依頼書(RFP;Request for Proposal)で何を探すべきかなど、引越しを計画する際に役立つと思われる計画の詳細が記載された文献があります。
このベストプラクティスは、シェアードプリントプログラムおよびそれらのプログラムのメンバーの両方を対象として書かれています。以下のベストプラクティスはどちらでも使用でき、どちらかに特定される場合はそう特定しています。
保存書庫に移動する資料の選別
加盟館は、蔵書構築方針、書架スペース、蔵書量の増加予測、将来の施設や改築計画などを検討し、どのような資料やどれくらいの数の資料を保存書庫に送ることができるかを知る必要があります。保存書庫によく選ばれる資料は、使用頻度の低いもの、希少価値の高いもの、アーカイブ品などです。壊れやすい現物や、大きさや構成が特殊な現物も、保存書庫施設がそれらの品目を保管・保存するのに適した設備であれば、しばしば選ばれます。
シェアードプリントプログラムへの参加も、保存書庫に選ばれる現物に影響を与えるかもしれません。既に保存書庫にある現物だからこそ、保持することを約束する加盟館もいます。他のケースでは、図書館はこれらの資料を保持する約束の一部として、現物を保存書庫に移動することを選ぶかもしれません。いずれの場合も、図書館はこれらの資料がシェアードプリント契約の期間中保持され、別の保存書庫への移動が追跡されていることを確認する必要があります。
現物検査/検証
現物検査を実施することにより、資料が良好な状態にあり、使用可能であることを確認します。 加盟館は、遠隔地保存書庫に何かを送る前に、「シェアードプリントプログラムにおける保存のためのベストプラクティス」および「シェアードプリントプログラムにおける蔵書点検のためのベストプラクティス」を確認する必要があります。
迅速な目視検査を実施し、以下の物理的特徴を確認してください:
- 蔵書の現物に適切なラベルが貼られていることを確認する。例えば、現物のバーコード、請求記号、および/または遠隔地保存書庫のラベルなど。
- メタデータに 「状態検査済」の注記を加える。
- 遠隔地保存書庫に送られる蔵書の現物の破損は最小限であることを確認する。最小限度を超える破損が発見された場合、修理を行うとともに、シェアードプリントプログラムにおける保存のベストプラクティスを参照する。
目視検査を行う際は、以下を参考にしてください:
| Good | 外部の保存書庫に送られる現物の25%について、無作為抽出を行う。 |
| Better | 外部の保存書庫に送られる現物の50%について、無作為抽出を行う。 |
| Best | 外部の保存書庫に送られる現物の75%について、無作為抽出を行う。 |
| Aspirational | 外部の保存書庫に送られる現物を100%チェックする。 |
書誌情報の検証
蔵書点検のベストプラクティスでは、現物の書誌情報を目録に正確に記載するために推奨される手順を概説しています。これらの基準およびレベルは、現物を保存書庫に移動する際にも適用されます。なぜなら、記録が現物を正確に反映することを確実にすることは、保管および検索にとって極めて重要な側面だからです。
移動と追跡
資料の保存書庫への移動には、何を保存書庫に移動させるかだけでなく、どのように移動させるか、移動過程でどのように追跡するかという計画も必要です。これらの決定に影響を与える要因には、移動する本の総数と相対的な大きさ、蔵書と保存書庫の場所、エレベーターと搬入口の有無と位置、本の移動先と請求番号順に保管する必要があるかどうか、移動のスケジュールなどがあります。予算に大きな影響を与える決定は、移動のための設備と消耗品の入手可能性、および誰が蔵書を移動させるかです。以下は蔵書の移動と追跡のベストプラクティスです。各レベルは、それ以前のすべてのレベルを満たしていることを前提とします。
| Good | Better | Best | Aspirational | |
|---|---|---|---|---|
| 人員 | 職員、学生、ボランティア | 職員または引越業者 | 訓練を受けた専任の図書館スタッフ、または信頼できる図書館引越し会社 | |
| 容器 | 箱 | 蓋付きの丈夫な容器またはブックトラック(通常) | 書籍移動用ブックトラック(専用) | 防水シーフ付きブックトラック(専用) |
| 本の配置 | 積み重ねる | 背表紙を下にするか、3~4段に重ねる | 直立または背表紙を下にする | |
| 梱包材 | あり | あり | あり | |
| 追跡レベル | 容器またはブックトラック | 現物 | 現物および容器 | |
| 環境 | 屋根付き搬入口 | 外気温が室温に近い | ||
| 車両輸送 | 4段以下の積み重ねられた容器、または固定されたカート | トートやカートを保持し固定するために設計されたリフトゲート付き車両 | 温度制御車 | |
| セキュリティ/安全 | エレベーター貸切 | 非公共用職員用または貨物用エレベーター | 休み時間または非ピーク時 | 閉館またはエリア閉鎖 |
保存書庫への納架と保存書庫の仕様
保存書庫の環境に関する推奨事項については、保存環境のベストプラクティスを参照してください。選んだ施設および納架方法の種類によって、いくつかのベストプラクティスに関する選択が決まります。以下の推奨事項は、施設にとらわれません。
保存書庫に到着したら、各現物をチェックインし、新しい場所に納架します。 移送中に使用される追跡メカニズムに応じて、資料は追跡リストと照合され、搬出され、および/または受領印を付けられるべきです。
複数の機関が施設を使用する場合、各機関の現物は、記録管理を容易にするために、最低でも追跡は別々に行われるべきですし、保管場所も明確に区切られた別々のスペースにされることさえあります。
Good
- 現物は保存書庫に到着後5日以内にチェックインされ、納架されること。
- 遠隔地保存書庫に保管されている資料の番号を特定できる在庫管理システムを活用すること。
- 特大のもの、重いもの、使用頻度の高い現物は、下の棚に保管すること。
Better
- 現物は保存書庫に到着後3日以内にチェックインされ、納架されること。
- 保存書庫に保管されている資料の番号及び配架されている棚の番号を特定できる在庫管理システムを活用すること。
- 現物には、保存書庫用の識別子または配架場所が与えられること。この識別子は、所有機関の所蔵レコードに追加されること。
- 現物をサイズ別に保管し、1つのスペースに保管できる現物の数を増やすこと。
- 書籍保管専用に設計されたトレイに現物を保管すること。
- 特殊なフォーマットの現物(書籍以外のフォーマット)は、専用の棚に分けること。
Best
- 現物は、保存書庫に到着してから1~2日以内にチェックインされ、納架されること。
- 保存書庫に保管されている資料の番号及び配架されている棚の番号を特定でき、配架場所に基づいて出納時間・経路を最適化した出納リストを作成できる在庫管理システムを活用すること。
- 現物はサイズとフォーマットでソートされ、保存書庫用の識別子が与えられること。この識別子は、所有機関の所蔵レコードに追加されること。
- 図書館の統合図書館システム(ILS)と統合する在庫管理システムを使用すること。
- 複数の機関から資料が持ち込まれる保存書庫においては、処理ミスを防ぐため、一度に処理するのは一つの機関の資料のみにすること。
- 外部から保存書庫に持ち込まれるほこりやその他の汚染物質を減らすため、現物に掃除機をかけること。
- 特大、重い、デリケートな収集品の取り扱いに関する職員研修を実施すること。
Aspirational
- 現物は、保存書庫に到着した日にチェックインされ、納架されること。
- 共有利用する現物は、遠隔地保存書庫の指定された場所に保管すること。
- 図書館の統合図書館システム(ILS)と統合できる在庫管理システムを使用すること。
- 保管スペースを最大化するために、コンテナのサイズと棚上の位置に基づいて、スペース管理及び棚レイアウトの設計を行うこと。
出納と利用
現物の検索と提供は、それが保存書庫の環境に収められているからといって妨げられるべきではありません。その他の推奨事項については、シェアードプリント対象資料に関する情報の開示およびリソースシェアリングとアクセスのベストプラクティスを参照してください。
また、リクエストを受けたら、以下のようにタイムリーに提供されるべきです:
| Good | リクエストされた現物は5日以内に回収され、配達されること |
| Better | リクエストされた現物は3日以内に回収され、配達されること |
| Best | リクエストされた現物は1~2日以内に回収され、配達されること |
| Aspirational | リクエストされた現物はその日の内に回収され、配達されること |
さらに、一度返却された現物は、再度状態を確認し、本ベストプラクティスの「保存書庫への納架と保存書庫の仕様」のセクションに従って再納架を行うべきです。
参考文献
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最終更新:2022年5月
原文:https://sharedprint.org/best-practices/moving-items-to-storage/